フィリピンの伝統民族衣装(正装)である「バロンタガログ(Barong Tagalog)」は現在も一般的に正装として利用されている衣服です。しかしながらベトナムのアオザイなどと比べると日本ではまだまだ有名ではないと思います。今回は現地のバロンタガログ工場に訪れてその製造工程を見てきました。

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今回筆者が訪れたのはフィリピンの首都マニラから車で3時間ほどの場所にあるルンバン(Lumban)という田舎町です。近くには2016年初旬には天皇皇后両陛下が現地を訪れたことでも知られるカリラヤという地区もあり、この地域一帯は日本とフィリピンの歴史が色濃く残る場所です。

そんなルンバンに集まっているのがバロンタガログ工場。古くからバロンタガログの製造が盛んな地域であり、最盛期には何百もの工場が稼働していたそうです。しかしながら現代では技術の進歩により手編みやミシン編みではなくコンピューター制御による生産が主流となり、工場の数も減っていたとのこと。今回訪れたのはその中でもまだまだ盛んに製造を行っている貴重なバロンタガログ工場の一つを見学させてもらいました。

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バロンタガログは「バロ」がマレー語の「Baju」からきており、意味は「ドレス」!古来から半透明で光の透過性がある生地が利用されてきました。スペイン統治前から既に存在していたバロンタガログは、フィリピンが経験したスペイン統治や戦争など激動の時代を経て、少しづつ形態が変化したり改善されてきました。伝統民族衣装は現在は正装として、結婚式や公式の式典に利用されることが多く、フィリピン人にとって大切な日にはバロンタガログを着用することが文化として定着しています。

 

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バロンタガログは最初は手編みのみでした。様々な植物の繊維が利用された結果、最終的に今に残っているのはパイナップルの繊維です。しなやかで軽く、強度もあるこの繊維を使って、手で編み込んでいきます。これも民族の伝統!短くても1ヶ月はかかるというこの作業。途方にくれそうなほどの製作時間です。もし購入するとすると安いものでも15,000ペソ(約35,000円)程するフィリピンの中でも最高級の伝統工芸品です。

 

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バロンタガログの歴史は手編みからミシン縫いに移り変わり、現代でもこれが主流の作り方の一つになっています。生地の上にデザインをトレースし、それをなぞるようにミシンで糸を縫い付けていきます。あまりに細かい作業なので初回ではまず上手く作ることができません。熟練の業が織りなす伝統の一品です。デザインは数千のパターンがあるそうで、それらを組み合わせることでオリジナルのバロンタガログを作ることができます。

 

ミシンの使い方がものすごく高度!こんな風に縫うことができるんですね・・・!長年培ったプロの技を感じます。こういった人の手による技術が伝承されていくことを願いたいものです。

 

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ミシンで実際に糸を縫い付けた完成形がこちら。糸の色と生地の色を変えることでかなり印象も変わってきます。オリジナルのバロンタガログを作る場合には、使うシーンを考えて色の組み合わせを選んでいくと良いと思います。基本の生地は繊維の白なので、濃い色も映えて美しく人気があります。

 

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デザインを生地にトレースする際に使われるのがこのデザインが描かれた紙です。デザインは小さな穴の連続で作られており、紙の上から青い塗料を塗りつけて穴から生地に転写することでミシンや手縫いの針を走らせる線を描いていきます。たくさんのデザインで一番多いのは草花と幾何学的な模様が組み合わさっているもの。バロンタガログの歴史が今に伝えるのは、数百年前の「美」のイメージでもあります。世界の中に存在しているデザインを組み合わせたり、そこに工夫をプラスして様々な形が作り出されてきました。

 

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生地を大きく広げて見せてくれたこの男性はバロンタガログのデザイナー。彼のデザインは人気があり、国内だけでなくアメリカなどにも輸出している層です。一見似たデザインが多く何が違うのかよくわからない部分もあるのですが、良く見てみると非常に芸が細かく、デザイン作りや縫い付けの作業を習得するには相当な時間がかかると思われます。こういった作り手の方々の労働環境が改善されていくと良いと思います。

 

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昔ながらの雰囲気を感じる製作所には古いミシンが並べられており、実際に縫う作業を行う際には手でコントローするするのではなく足先の繊細な動きを針に伝達して刺繍を作っていきます。実際に見てみると本当に圧巻の技術なので、機会があれば是非ご覧頂きたいと思います。働いていたのはベテラン夫婦の方から大学生まで様々。性別も問いません。それぞれが役割を果たしてバロンタガログを作り上げています。

 

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日本の着物や染物の需要が段々と少なくなっている一方で、バロンタガログは古くからの歴史を守って、民族衣装として未だに一般利用の服として全国的に利用されています。熱帯地域特有の蒸し暑さと強い日差しから体を守ってくれる植物繊維と吸水性、そして何よりも精密なデザインが多くの方々から支持を集めているのです。マニラに訪れたり、現地に駐在・在住されている方は機会があれば是非バロンタガログ工場でその製造工程を見学してみてはいかがでしょうか!

追記:本工場へ訪れる内容が現地旅行会社のツアーになりました!
詳細はこちらからご確認下さい。

(倉田拓人/Taku)

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Takuto Kurata

Takuto Kurata

Manila Branch Manager at PTN Travel Corp,
W.W.J PROJECTを考えた人。2010年、フィリピン・セブで国際協力活動を行う「NGO FEST」を設立。現在は日本3支部体制に広がる。2012年には国際協力のプラットフォーム「UYIC」を設立。2013年8月よりフィリピンの旅行会社に転職しセブ島へ移住、その後マニラ支店設立・同士店長、現在は社会貢献事業を民間で行うためイスタンブールに移住。個人でブログ「20代の海外就職論!」を執筆中。